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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)8号 判決

控訴人 株式会社東陽相互銀行

右代表者代表取締役 箸本弘吉

右訴訟代理人弁護士 海老原信治

被控訴人 岸野和夫

主文

原判決主文第三項中被控訴人に対する請求に関する部分を取り消す。

被控訴人は控訴人に対し金五〇〇万円及びこれに対する昭和五三年四月一日から完済まで年一八・二五パーセントの割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

この判決中金員の支払を命じた部分は仮に執行することができる。

理由

≪証拠判断省略≫、以上の各証拠に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができ、≪証拠≫中この認定に反する部分は前顕各証拠に照らし採用し難く、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本間一男(以下「本間」という。)は、土浦市内において土木建築請負業を個人で経営していた者で、昭和四九年一二月二一日被控訴人と相互銀行取引契約を締結し、右契約に基づき控訴人から手形貸付、手形割引等の方法による融資を受けてきたが、昭和五二年に入り事業の経営形態を従来の個人企業から法人組織による経営に改めることとし、同年三月一二日、土木建築資材の製造販売、土木建築請負業等を目的とする有限会社共友商事(以下「共友商事」という。)を設立し、自らその代表取締役に就任し、その後間もなく共友商事が従来の本間個人の事業を引き継いで経営することとなつた。

(二)  被控訴人は、かねて本間の控訴人に対する相互銀行取引から生ずる現在及び将来の債務につき金五〇〇万円を極度額として連帯保証をしていた者であるが、共友商事が設立された際、同会社の監査役に就任した。

(三)  本間は、同年五月末ごろ控訴人に対し金五〇〇万円の借入申込をしたところ、控訴人から、今後は本間個人に対してではなく、本間の経営を承継した共友商事に対して貸付けを行いたい旨告げられ、併せて、これとは別個に従来の本間個人の債務について共友商事が重畳的に債務引受をしてもらいたい旨要求された。

(四)  そこで、本間は控訴人の右各申入れを承諾し、そのころ被控訴人に対し、右の事情を説明して、共友商事が控訴人から新たに融資を受けるについて共友商事のため連帯保証人になつてもらいたい旨依頼した。

(五)  被控訴人は、本間の右依頼を引受け、共友商事が控訴人との取引によつて現在及び将来負担する一切の債務について元本債務額五百万円の限度で連帯保証する旨及び被控訴人が控訴人と共友商事との取引について将来他に共友商事のために保証したときでも、その保証によつてこの連帯保証には何らの変更も生じないこととする旨の記載のある控訴人あて保証書(甲第一六号証の一)の連帯保証人欄に押印し、本間を介して同年六月一日ごろ右保証書を控訴人のもとに差し入れ、控訴人は同年六月一日共友商事に対し金五〇〇万円を利息九・七五パーセント、返済期日同年九月三〇日、遅延損害金日歩五銭の約で貸し付けた。(なお、右保証書(甲第一六号証の一)の債務者欄の記載は土浦市四一八九の六本間一男との表示に一部加除がされ、土浦市中高津一一六一の一(有)共有商事代表取締役本間一男と訂正されており、その名下の印影は本間一男名義の印であるが、右保証書の債務者欄は同人の作成したものであり、(有)共有商事の記載は(有)共友商事の誤記であり、名下の印影は、同人の押捺したものであつて、後記共友商事の債務引受契約書(甲第一五号証)の債務引受人欄にある有限会社共友商事代表本間一男名義の印影とも同一であり、本間は共友商事の代表者として押印したものである。)

(六)  そして、従来の本間個人の債務についての共友商事による債務引受契約書(甲第一五号証)は同年六月六日共友商事から控訴人のもとに差し入れられたが、被控訴人はこれについても別途本間の連帯保証人として右契約書の作成に関与している。

以上の認定事実を総合すれば請求原因一及び二の事実を認めるに十分であつて、被控訴人は共友商事の控訴人に対する昭和五二年六月一日付け金五〇〇万円の借入金債務につき、連帯保証人としてその弁済の責めに任ずべきである。

そうすると、被控訴人に対し右貸付金五〇〇万円及びこれに対する返済期日後である昭和五三年四月一日から完済まで年一八・二五パーセント(日歩五銭を平年の年利に換算したもの。)の割合による約定遅延損害金の支払を求める控訴人の本訴請求は正当として認容すべきであり、原判決中右請求を棄却した部分は失当であつて、本件控訴は理由がある。

よつて、民事訴訟法三八六条により原判決主文第三項中被控訴人に対する請求に関する部分を取り消した上右請求を認容する

(裁判長裁判官 柳川俊一 裁判官 近藤浩武 林醇)

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